デイズ
先を行くジェスはしかし、幸一の呼びかけが聞こえないのか、立ち止まるのはもちろん、速度を緩める気配もない。
「ジェスさーん、待ってー!」
走る事一分、ようやく幸一はジェスに追いつくことが出来た。だがジェスは幸一の方を見ようとはしない。
「……また、やってしまったよ」
「そうですね、また……って、ええと、また?」
ただ頷いていた幸一は、自分が紡いだ言葉を怪訝そうに繰り返す。
「一年前にも、こういう事があったのだよ……今回のように、他のメンバーの事を言われてね……つい、カッとなってしまい……フランクがいなければどうなっていたやら」
力無く首を横に振る。
「そして今回も同じ過ちを繰り返してしまった……僕は本当に、愚か者だ」
沈痛な面持ちで、もう一度呟く。僕は、愚か者だと。
「……ジェスさんの気持ちと行いは、そんなに愚かな事なんでしょうか?」
幸一は、ジェスを見てはいなかった。顎に手を当て、真剣に何かを考え込んでいた。
「だって、そうでしょう? ジェスさんが怒ったのは、ぼくや、みんなの事を馬鹿にされたからでしょう? それを怒るのは、友人としていけない事でしょうか? ……正直、僕にはジェスさんを咎める気には、どうしてもなれないんですけど」
幸一は自らの発言に納得したのか、深く頷く。
「うん、やっぱりぼくには、ジェスさんが愚かだとはどうしても思えない。もし、ジェスさんが間違っていたとしたら、それは方法論ですよ。やっぱり、暴力はいけない」
「確かに、僕の方法論は間違っていた。それは間違いない。だがいくら僕を止める為とはいえ、あの行動は感心できないな。もし僕が君の自傷行為に気付かなかったらどうする……ああ、そうか、なるほど。あの時は余裕がなく、気付かなかったが……寸止めできたのだな、君は。……僕を止める為だけにうった芝居か」
