ブル
ジェスはそうかなるほど、これは迂闊だったと続けるが、幸一は申し訳なさそうに頭をボリボリと掻いている。
「ジェ、ジェスさんなら頭に血が昇ってても気付くだろうと……す、寸止めなんて器用な芸当、そもそも出来ません。そのぉ、あのぉ、こう、脊髄反射って言うんですか? 気付いた時には、か、身体が勝手に動いていまして……」
この答えにジェスは口をあんぐりと開け、呆れたように額に手を当てる。
「こ……今後は、僕も気を付けよう。しかし、君も人を止める為とはいえ、ああいう自傷行為に走らぬよう要求したい。本当に、僕が気付かなかったらどうなっていたんだ……ゾッとしてしまう」
「も、もちろんです。以後、あんなことはもうしません……」
『もしジェスが止めなかったら』という想像が頭の中で再度描かれたのか、春の陽気で止まった震えがまた出る。
(しかし……最初は臆病そうに見えたが、中々どうして勇敢だな、木一君は。まあ、ある種の無謀と言い換えてもいいかもしれないが……結果はまあ良いものなのだから、無謀とは少々違うか)
胸の内だけでジェスはそう思考し、幸一の青ざめた顔を眩しそうに見やった。