マナ
これに、ジェスとフランクが怪訝そうに顔をしかめた。
「木一君、まさかとは思うが……」
「オメェも、マナを疑ってんのか?」
「そんな……ヒドイですよ!」
ロザリアも幸一を非難するように甲高い声をあげる。
しかし幸一は応じない。死体に注がれていた眼は、頭上のマナに向けられた。だが、その眼は群衆の圧力を感じさせる眼とは異なり、穏やかなものだった。
幸一の眼に促されるよう、マナはバッグの中から血液パックを取り出す。Oと書かれているそのパックを、幸一に手渡す。
「これをいつも、何個持ち歩いています?」
「……昼と夜用に、二個。量は大体、コップ一杯分くらい」
「つまり、一食に二百ミリリットル必要という事ですね」
幸一はどうも、とマナに血液パックを返し、今度は沙紀を見上げた。
「マナさんがこの事件の犯人ではないというぼくの推論、聞いて頂けますか?」
この一言に、周りがざわつく。それに沙紀は事務的に促す。
「静かに……どうぞ」
「まず、マナさんはこうして血液パックをいつも持ち歩いています。あまりの空腹に耐えかね、理性を失って人を襲うという可能性は低いと思うんですけど……」
「その時は、持ち歩いていなかったという可能性は?」
揚げ足取りと言われそうな反論に、幸一は律儀に答えた。
「もちろん、あります。ただ、それにしてもおかしいです。一食や二食抜かしたからって、僕達は人を襲ってまで食糧を手に入れはしませんよ。マナさんだって、それは同じでしょう?」