ルデ
「それでも、可能性は捨てきれないと思うけど? 第一、この干からびた死体は何? 私には、吸血鬼が血を吸って出来たミイラにしか見えないんだけど」
幸一は頷き、干からびた死体に眼を移す。
「百ある可能性の一つまでは、確かに捨て切れません。でも、彼女達は血を必要としてはいますが、失血死させるほどのものじゃない。個人差はありますけど、ぼくの知っている範囲では、精々多くて四百ミリリットルのはずです」
観衆は淀みない幸一の論に聞き入っているのか、今の所は文句や反論は無い。
「口封じという可能性は? 学生の血を夜な夜な吸っているとなれば問題だもの」
「まあ、有り得ますね」
これに幸一は意外にもあっさり首肯する。
「けど、やっぱりおかしい。沙紀さん、貴女が何かやましい事をしたと仮定して下さい。そして、何かしらの証拠が残ったらどうします? 隠そうとはしませんか?」
「何が言いたい訳? 結論をお願いするわ」
「つまり、こんな人目のつく所に、吸血鬼が血を吸って出来たような死体が転がっている事そのものが、おかしいんですよ。仮に、マナさんがこの事件の犯人だとしましょう」
「おい、コウイチ!」
「あくまで仮の話ですよ、仮の話」
フランクの叱責に答えた幸一は素っ気なく、しかし明るい口調で応じる。
「どうしてこんな人目のつく所に死体を放置するんです? しかもこの死体は貴女が言っていたように、どう見てもマナさんが犯人にしか見えないのに」