堀
「その……悪かったよ、勝手に決め付けて」
ペコリと、サイの頭を軽く下げた。
「しかし一体誰だ、こんな事をしたのは……!」
憤慨するジェスはやり切れなさそうに、変わり果てた磯辺を凝視している。ロザリアも顔を青ざめさせ、ミイラとなった磯辺の遺体に、持っていたカーディガンをかけた。
マナは初夏であるにも関わらず、寒気を感じた自分の身体を抱き締める。その寒さを振り払うようにマナは幸一に呼びかけた。
「じゃあ、私達も教室に行きましょうか」
「え? あ、そうですね……」
先を行くマナの背を追い、幸一は教育学部棟に向かう。
「……大変な事になりましたね」
幸一の顔は険しい。額にはシワができ、眼は針のように細められている。
「幸一君、落ち着いていたね。正直……助かったよ」
努めて明るい口調でマナは先程の出来事を振り返った。
「え? あ、まあ、その、入学以来、フランクさんの顔を間近で見たり、クマと遭遇したり、ジェスさんを制止したりって、色々あったんで……あははは、恐怖にも耐性が出来るものなんですね、初めて知りましたよ!」
幸一は階段をのぼる足は止めず、照れ臭そうに頭を掻き、カラカラと大声をあげて笑ってみせる。だがマナは見逃さなかった。頭を掻く彼の手が、小刻みに震えている事に。よくよく見れば、顔色も病人のように悪い。
あのミイラが、怖くない訳がない。大学構内に猟奇的な殺人鬼がいるという事実に、恐怖を覚えない訳がない。何より……人を、ああいうふうに殺す事が出来る自分が、怖くない訳がない。
足を止めたマナに、振り返った幸一が声をかけた。