デイ67
「マナさん? どうし」
「……幸一君。君は、私の事が、怖くない?」
聞かずにはいられなかった。救いを求めかの如く、血のように赤い瞳を彼に向ける。
幸一は『何を言っているんですか』とでもいいたげに笑おうとし……失敗した。引きつりそうな顔を隠すよう、床に眼を落とす。
「すいません……ぼくは、みんなが……マナさん達が、怖い」
嘘はつき通せないと見たか、幸一は俯いたまま消え入るような小さな声で言った。
「理性では、マナさんがあんな事をする訳がないのは、わかっています……でも、それを可能とする力を持っているという事実だけで……怖い……どうしようもなく」
自分は、彼にとって恐怖の対象だ。……これ以上怖がらせたくはない。ペタンと階段に座り込む幸一から離れるべく、マナは純白のコートを翻す。
「……でも、こんな自分が……嫌いだ……何より、誰よりも、自分が怖い……!」
思いもかけぬ彼の呟きに不意をつかれ、足が止まった。
尋常ならざる力を持つ自分を恐れるのは、わかる。だが幸一が幸一自身を恐れるとは、どういう訳か?
「見かけだけで、人を恐れる……とんでもない力を持っているというだけで、怖がる……みんなが……どういう人達なのか、ぼくは知っているのに……こんなぼくが、吸血鬼だと言うだけで犯人扱いした他の人達と、何が違うと言うんだ! そうやって人の心を傷つけて……あんまりだ……許せない程に、ぼくの心は、醜くくて、弱過ぎる! 何より……そんな自分の心が、恐ろしい……!」