ガビルデイズ69
月も雲間に隠れた夜、大志田大学構内を黒尽くめの男が木々のざわめきに紛れ、静かに闊歩していた。その背にはギターケースが抱えられている。男が見つめる先には、所用でもあったのだろうか、一人の女性。男は女性のあとを尾け始める。
女性は大学近辺のアパート通いなのか、山手の道へドンドン歩を進めていく。男にとっては好都合だった。
人気はおろか、明かりすら周りからなくなった事を確認し、男は行動に移った。
音をたてぬよう三十メートルの距離を素早く駆け抜け、女性の背後を取ったのだ。手には、ナイフ。
「お嬢さん、静かにして貰おうか。声を出したらどうなるかは、わかっているな?」
陳腐な脅し文句が飛び出すが、女性は答えない。恐らく、恐怖の余り思考が止まってしまったのだろうと、男は解釈する。
このまま更に山奥へ行った後、特注の凶器を使い、失血死させる。後は他の者達が必要な処置をしてくれる手筈だ。
「山手に向かって、ゆっくり歩け」
女性は頷き、山手に向かって歩き始める。
男は歩きながらどこで始末するかを考え……眩暈がした。風邪でもひいたのだろうか?
早めに仕事を終わらせよう。そう思うが、男はどうにも身体が重くなっていくのを自覚した。そして、遂に男は自らの身体を支える事が出来ず、その場に崩れ落ちてしまった。
女性はそんな男の異常に逃げ出すでもなく、自分の髪をむしり取った。その下から、見事な金髪が姿を見せる。彼女―ロザリア―は倒れた男の頬をペチペチと軽く叩き、熟睡している事を確認。
「みなさーん、出てきて大丈夫ですよー!」
呼びかけに、マナ、フランク、ジェス、そして幸一が次々と密林の中から出てくる。
「コイツが犯人か! とっとと警察に突き出してやろうぜ!」
「待て。まだこいつが磯辺を殺した犯人とは限らない。単なる通り魔とも考えられる。他にも仲間がいるかもしれない。さて、マナ。気は進まないだろうが、心を鬼にしてくれ