バデ
陽も大分沈んだ六時頃、大志田大学駅前に、ゴミ拾いに来た。少なくとも、当初の目的はゴミ拾いだったはずだ。なのに、いつからだろう……駅から少し離れた空き地で、『仮面バイダー』アトラクションを始めたのは!
「いけぇぇ、バイダー!」
「ショアッ! バイダーキックゥ!」
子ども達の声援に後押しされ、『仮面バイダー』のお面を被ったジェスは飛び蹴りを繰り出す。怪人役のフランクは胸板にジェスの蹴りをまともに受けたものの、
「グワハッハッハ! バイダーよ、貴様の蹴りではオレは倒せん!」
まったく堪えていない。その巨大な拳でジェスを殴り返す。正確には、ジェスが残した影を殴ろうとして空振り、体勢を崩した。
「クッ! 流石は怪人クロコダイン! 一筋縄ではいかんか!」
ジェスは汗をかいてもいないのに、手の甲で汗を拭う素振り。
「がんばれ〜、バイダー!」
地べたに座る数名の子ども達が、目一杯声援を送る。これにジェスは親指を立て応える。
「無駄だ無駄だ! バイダーにオレは倒せん! グワッハッハッハ」
フランクはその声援を掻き消すように下卑た大声で叫ぶ。
そんなアトラクションもどきを見つめる幸一は、デレキとゴミ袋を持って呆然としていた。
「……マナさん、いいんですか、あれ?」
幸一はジェス達を『あれ』呼ばわりし、デレキで指した。
「まあ、子ども達も喜んでるし。それに、いつもの事だから」
「え? いつもいつもやってるんですかぁ?」
ロザリアの質問にマナは苦笑。
「去年の七月までは、普通にゴミ拾いしてたの。でも八月頃からかな、『怪人がゴミ拾いしてる』とかって、子ども達の噂になってね。以来、ゴミ拾った後に、こうやってアトラクションをするようになったんだよ」