ビブルデイ
「何事?」
冷たい問いかけに、皆がそちらを見た。
誰もその問いに答える事は無かったが、干からびた死体が全てを物語っていた。
沙紀は死体に歩み寄り、学生証に眼を落とすと静かに独白。
「……ここ数日、姿を見ないと思ったら」
そして、涼しげな様子でマナを見やる。
「で、犯人はわかっているのかしら?」
「何でそこでマナを見やがるんだよ、テメェ!」
罵声にも、沙紀は冷たく応じるのみ。
「皆が彼女を見ていたから、何か知っているのかと見ただけよ」
「……まさか、オメェがやったんじゃねえだろうな? 生徒会の人間がこんな殺され方したら、そりゃあ真っ先に疑われる奴は決まりっているからなっ!」
「……中々愉快で、愚かしい推論ね」
凍えそうな殺気と、灼熱した怒気が渦を巻き、今にも爆発しそうだ。
「沙紀さん。いくつか、聞きたい事があります」
割って入った幸一の声は、そんな両者とは似ても似つかぬものだった。
「沙紀さんがこの大学に入ってから、こういう事件は過去にありましたか?」
「いいえ。私が入学して二年、殺人等という物騒な事件は起こってないわ。……ここに移転してから、おそらく初めての事じゃないかしら?」
淡々と応じる沙紀に、幸一はさらに問いを重ねる。
「磯辺さんが学校に来なくなってから、何日になります?」
「一週間よ」
しばらく幸一は死体をじっと見入り、マナに呼びかけた。
「マナさん。血液パックは、持ってますか?」
「え? あ、えっと」
「血液パックは、持っていますか? 持っていたら、ちょっと見せて頂けませんか?」